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【書評】イスラム飲酒紀行

「イスラム」と「酒」は結びつきません。

なぜなら、イスラム法で飲酒は禁止されているからです。

これは、日本人でもよく知られた話でしょう。

今回は、そのイスラムにおけるタブーを著者が実際に旅しながら、綴る旅行記を読みました。

虚像が見えるイスラム

この著書で出てくるのは、

カタール、イラン、シリア、トルコ、バングラデシュ、マレーシア、ソマリランド(未承認国家)です。

イスラムの戒律の厳しさはそれぞれによって違いますが、

どの国も正真正銘のイスラム国家です。

では、酒はないのか?

確実にあります。

イスラムであっても国際空港の免税店では売られていますし、

街中では隠れた形で販売されています。

そして、現地のムスリム(イスラム教徒の総称)も、隠れて飲んでいる人が多いのが実態です。

(特に、文中のイランの記述は驚きました。)

しかし、街には酒は存在しないという世界が繰り広げられている。

酒は飲むけど、決して酔っぱらったり、街中で酒瓶を運んだりする姿を見せてはいけないんです。

リアルワールドと虚像が確かに存在するのが、今のイスラムの現状と言えます。

ここで言えることは、イスラム国に代表されるように、

日本ではイスラムというと原理主義的で危険な思想と思われがちですが、

実態は決して違うということです。

もちろん、原理主義的なムスリムもいますが、

軟化したムスリムも存在しています。

そして後者は、私たちと同様に、飲酒をする人がいるのです。

ちょうど日本における仏教信仰と同じと考えられるでしょう。

無宗教に近い人も多いのです。

現実とはまさに、

黒と白ではなく、グラデーションの世界と言えます。

しかし、表立ってイスラムに異を唱えることができません。

リアルワールドではおとなしくしており、

虚像では好き放題で生きているのがイスラムの現状です。

私も近しい経験がありまして、

仕事で東南アジアをうろうろしているときに、

ジャカルタでインドネシア人と会食する機会がありました。

彼は、ビジネスの場では、イスラムを重んじる所作を見せていましたが、宴会になると一変。

インドネシア国産のビール・ビンタンビールをガバガバ飲み出したんです。

本音を聞こうと私は聞きました。

私:「イスラムはお酒がタブーじゃないの?」

彼:「昼はムスリムだが、夜は関係ない。」

???

彼が言うには、外や明るいと飲酒が憚られるが、

夜の個室であれば問題ないと言っていました。

(彼は、その会食で豚肉も食べていました。笑)

ストイックなイメージがあるイスラムも、こんな感じで運用されています。

つまり「本音」と「建前」です。

「本音」と「建前」は日本人の専売特許と考える人も多いですが、世界各地に存在しています。

アメリカやオランダ、ドイツなど本音をズバズバ言っている国もあれば、

オブラートに包んで上手に本音と建前を使いこなす国もあります。

イスラムの国々は、間違いなく後者ですね。

こういう感覚は、

実際にその国を訪れたりしないと知見として得ることはできないと考えます。

つまり、ニュースだけ見ていても到底分からないものです。

インターネットで簡単に検索できる現代において、

それだけに頼らずに実際に目で見ること。

旅行記はこういった実行動の重要さをいつも学ばせてくれます。

高野秀行さんの著書では、以下も面白かったです。

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ABOUTこの記事をかいた人

1986年生まれ。長崎県佐世保市在住。山暮らしでサラリーマンをしながら、暇を見つけては旅をして、その模様をつづっています。 Instagramで訪れた場所の写真を日々アップしています。 noteで旅全般の記事を作成中。 https://note.mu/ge__shi トライアスロン挑戦中。 http://try-tri-try.net/